Series : Slits
プリントされた紙を這うカッターの刃
それらのスリットはときに髪の毛のように、ときに波のように世界を包む







































この作品を作り出したのはパリに移住したことが大きなきっかけになっている。 パリの街並みとステンドグラスだ。パリの建物。それはそれぞれが個性を持っている。大量生産だが画一化がされる前の時代につくられた街並みが自然災害や戦争から奇跡的に保たれ残っている。ここに来たらバルコニーを見て欲しい。そのそれぞれが個性的でどれもが異なる。

ここに来る前、装飾は本質ではないと考えていた。しかしここに来て、では本質とはなんなのだろうかと考えるようになった。この建物たちの装飾性を作品に取り込みたいと考えた。スリットは写真を装飾する。しかしその装飾が被写体と分離していては意味をなさない。その時に示唆を与えてくれたのは教会のステンドグラスだ。パリにはたくさんの教会がある。それらの教会のステンドグラスには古の物語が映し出されている。本当に遠い向かいのはずなのだが、光を通して感じるそれらはもっと近いところの肌感覚的なものでつながって行く。とても不思議な感覚だが光には時を超えて行く力があるよう思う。私たちの生の尺を超えて行くもの。それが宿ることで初めてスリットと被写体が融合するように感じる。

スリットを入れているとき、刃先がどの方向に向かって行くのか自分でも分からないときがある。それは自分の意思を超えて「指が導く」感覚。。出来上がったスリットに光を透し、時には光に反射させる。そこには被写体の世界と光のスリットが混じり合う。そこには被写体が持っていた別の美が現れる。そして見る人に新しい世界を提示する



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